店長日記

防犯カメラ導入の是非を問う

2008年12月17日

 ピッキングをはじめとする空き巣・窃盗から駐車場荒らしやエレベーターなど密室での性犯罪など、マンション内でもこうした事件は起こっている。最近のマンションであれば新築時から防犯カメラを設置してセキュリティー強化をはかっているが、築年数のたった物件では後付けせざるを得ない。今回は既存マンションで防犯カメラを導入する場合の注意点を考えてみたい。

○条例で防犯カメラの導入を促す

 東京都港区では本年4月から「安全で安心できる港区に関する条例」が施行される。マンションを建設する際、建築確認申請前に警察署との防犯施設に関する協議が義務付けられ、努力義務として防犯カメラ設置が義務付けられた。「豊島区生活安全条例」を成立させた豊島区でも同様で、区民すべての防犯意識を高めることを目的としている。

○導入をはばむ理由とは

防犯カメラ設置で防犯意識を高める目的だが…

 各自治体がこうした法整備をすすめるのは犯罪が後を絶たないことが動機づけとなっているが、管理組合レベルでみると自発的に防犯カメラを導入する動きは少ないように思う。障害となる理由は大きく2つあり、ひとつは費用の面、もうひとつは居住者の意識の面だ。

 設置コストはマンションの規模やカメラの台数などによって異なるので一概には申し上げられないが、とある管理組合(総戸数67世帯の単棟型マンション)では白黒カメラ4台にデジタルビデオレコーダーとTVモニターが各1台で約67万円、別途機器取り付け費用が26万円ほどで、合計約93万円かかっている。基本的にはカメラの台数と画像のクオリティーで値段は上下するし、一度にまとまった費用が工面できなければリースという手もある。上記の例では5年リース契約でリース料が月額約1万8000円ほどであり、かなり負担は抑えられるようになる。

 もうひとつのハードルである意識の面は各自の価値観によるところが大きいので意見が分かれるところだが、反対する居住者の理由としては「必要性を感じない」「防犯効果が期待できない」というのが大方だ。特にトラブルもなく平穏な日々を過ごせていることのあらわれである半面、一度でも事故が発生すると途端に態度を一変させる。被害にあって初めて危機意識を持つからだ。

○カメラの導入は居住者も監視される

 さらに、カメラ導入で必ずといっていいほど議論されるのがプライバシーの問題だ。デリケートな問題だけに慎重な議論が必要となるが、具体的な意見とし「自分達住人も監視されることになる」「息ぐるしい感じがする」といった声が多く、やや大げさな表現をすれば人権に関わることになる。

 しかし整理して考えてみると「録画されたビデオの管理や開示ルールをどのように定めるか」という議論であり、利用目的や管理方法が定まっており「本来の主旨」以外で利用されなければプライバシーには引っかかってこないであろう。管理規約上ではカメラ設置は「共用部分の変更」に該当するため区分所有者の4分の3以上の賛成を要するので、一部の意見だけで事が進む危険はないと言える。

○導入に当っての注意点

 最後に、管理組合が注意すべきポイントを挙げてみよう。

・防犯カメラを導入しても犯罪がゼロになるとは限らない
・録画テープの保管や開示についての運用ルールを作成する
・単なる抑止効果だけならイミテーションでもいい
・屋外では夜間に撮影できなくならないよう照明と併用する
・マンションの資産価値が上がる
・いま一度、設置目的をはっきりさせておく

 カメラの設置により安心してしまい、防犯意識が低下しては何の意味もない。総合的な対策がなされて初めて効果を発揮するため、過剰な期待はしないほうがいい。重要なのはカメラ設置に至るまでのプロセスによって居住者の防犯に対する意識が高まることだからだ。

 なお、警視庁と国土交通省が共同で検討し策定した「共同住宅に係る防犯上の留意事項」には管理員室や駐車場、エレベーターなどの共用部分から専有部分に至るまで防犯上の注意点が具体的に記されているので参考にしてみるといいであろう。


 <共同住宅に係る防犯上の留意事項>

 この留意事項は共同住宅の新築・改修計画を行う際に、住宅の構造・設備などについて防犯上の留意事項を示すことにより、成熟社会に対応した住宅ストックの形成を図ることを目的と、共用部分と専有部分それぞれに具体的事項が記載されている。
 留意事項の全文は国土交通省住宅局のホームページ(http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/press/h12/130323-1.htm)にあります。

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